来賀友志さんは麻雀漫画でお馴染みの原作者です。
もともとは近代麻雀の編集長をしていたという過去を持ち、プロ麻雀の世界にも深い関わりがあります。
打ち手としても強豪で知られていて、プロ連盟のマスターズというタイトル戦で優勝した経験もあります。
代表的な作品は「天牌」。
一般紙で現在も連載されている人気作品なのでご存じの方も多いのではないでしょうか。
ですが、来賀先生の原作は「天牌」だけではありません。
作画に注目されがちの麻雀漫画の世界に隠れた名作がたくさんあります。
というわけで私が読んだ来賀作品をおすすめ度とともにズラリと紹介します。
[ad#co-2]Contents
あぶれもん(作画:嶺岸信明)
おすすめ度
80年代後半に近代麻雀に連載していた作品。
横浜の小さな街、弘明寺に存在する「善元」と「かり田」という2つの雀荘。
ともに日本一と称される二店の雌雄を決するために、それぞれの店の雀ゴロたちの一大決戦が繰り広げられる。
年代的に劇画時代の流れが色濃く残っているストーリー。
イカサマを使った瞬間に腕が飛ぶわ、腹は刺されるわとバイオレンスな内容。
ただ闘牌シーンはしっかり作られていて、いきなり役満炸裂のようなつまらない麻雀劇画とは違うのが来賀作品らしいところ。
物語終盤に出てくる帝王と呼ばれるキャラがラオウにしか見えない。
ザ・ライブ(作画:神田たけ志)
おすすめ度
80年代の終わりから90年代のはじめにかけて連載されていた作品。
作画は「ショーイチ」で有名な神田たけ志。この作品とショーイチの連載時期はかぶっている。
天才的バイオリニストでありながら麻雀の世界に飛び込む事になったオザワ。卓上を完全に支配して最後まで誰が勝つかわからない名勝負を演出する。
「場は平たくしないとね」というオザワのセリフは単行本4巻すべてのウラ表紙に書かれている。
絵はキレイで闘牌内容も凝っているが今ひとつ。
麻雀新撰組をモデルにしたキャラクターが対戦相手として登場するのは魅力的。
だが、主人公オザワの目的が勝利ではなく点棒を平均的にすることなので、イマイチ感情移入しにくい。
圧倒的な力量を持ちながら手加減しているように見えてしまう。
麻雀蜃気楼(作画:甲良幹二郎)
おすすめ度
90年代前半に連載されていた作品。
主人公雄二は建設会社に勤めるサラリーマン。
ある日、雀荘に連れて行かれたのをきっかけに麻雀の世界に足を踏み入れて、平凡な人生のレールから外れていく……。
麻雀シーンはそこまで多くないが来賀作品らしくレベルは高い。
絵は見ての通りゴルゴ13を思わせるような超劇画風。
ストーリーも重厚で緻密なので麻雀抜きでも面白い。
絵柄で避けている人がいたらもったいない。騙されたと思って読んでみて欲しい。
作中で、相手の転落人生を予告するようなシーンがある。
「今度はアンタがローリングストーンズだ」
ローリングストーンズってそういう意味じゃないような……。
ナイトストーン(作画:神江里見)
おすすめ度
物語の語り部である篠原は雀荘で、カリスマ的存在感をもつ高校生北島敬に出会う。
敬は自分のことを嗅ぎ回る篠原に自身の目的や計画を告げる。
「日本にいる3/4の人間は不必要な者たちだ。排除しなければならない。そしてそれを選別するのには麻雀を打たせるのが一番手っ取り早い」
教祖のように崇められている敬は、学生たちを扇動して恐ろしい計画を突き進めていく。
独特の画風が宗教漫画のような雰囲気を漂わせているが、内容にはメチャメチャ合っている。
設定は無茶だが様々なギミックが詰め込まれていて、意外に普通に読み進めてしまう。
麻雀シーンは異能バトル系。
とにかく超能力のような和了りの応酬だ。
暗カンされて無いはずのカンチャンでもツモる。
全2巻しかないが話はキレイにまとまっている。
てっぺん(作画:嶺岸信明)
おすすめ度
90年代なかばに連載されていた作品。
国会議員の息子である主人公誠と同級生の不良少年田岡。
アウトローの世界に足を踏み入れた二人が、道を違えながらもそれぞれ麻雀のてっぺんを目指していく青春ストーリー。
キャラ設定や物語の運びなど「天牌」と重なるところが多い。
初期の天牌を読んでいた時には「てっぺん」に似ている漫画だと感じていた。
物語の後半には、議員として修行をしている誠の兄も麻雀バトルに参戦。
本を読んだだけで激強になり、選挙に出馬しながら誠が参加する麻雀大会に出場してくる。当選する気あんのか、この人。
舞台はウラ麻雀から競技麻雀の世界まで盛りだくさん。後半のストーリーはかけ足気味だがキッチリまとまっている。
全5巻とほどよいボリュームで「天牌」好きにはオススメ。
伝授 平成ヘタ殺し(作画:本そういち)
おすすめ度
本そういち作画で90年代なかばの作品。
当時発行されていた「雀王」という雑誌に連載されていた。
下手の横好きで麻雀負け組の大学生ボンド。ある日出会った凄腕の雀士ジミーに麻雀の極意を教わりながら強くなっていく物語。
基本的に一話完結のストーリーで、毎回一つ話の中心となる麻雀セオリーが登場する。
戦術自体はやや古く、オカルト気味のものもあって現在役立つかは微妙。
話自体はよくできていて「雀王」があっさり廃刊にならなければもっと続いていたはず。(全2巻)
ウァナビーズ(作画:本そういち)
おすすめ度
こちらも本そういち作画。ヘタ殺しとほぼ同時期に近代麻雀で連載されていた。
鷹ヒロトは妹と母を支えるために真面目に仕事に励む若き銀行員。
上司のために腕に覚えのある接待麻雀で一仕事成功させるヒロトに、謎の老人から麻雀の誘いがかかる……。
心を読める老人。凄腕イカサマ師のマジシャン。
彼らは謎の組織ウァナビーズの一員だった。
序盤はバンカーものの小説のような始まりのストーリー。
ウァナビーズなどの登場人物も出揃い、後半は巨悪と戦うスケールの大きな麻雀バトルに突入する。
ところが、この盛り上がる後半部分の単行本が発売されていないのだ。(2巻まで)
近代麻雀のコミックはこの「売れ行きイマイチだから単行本出すの途中でやめる」パターンが多い(特に新人)のだが、まさか本そういち+来賀友志の単行本まで切られるとは夢にも考えていなかった。
こんなことばかりしているから決まった作品しか単行本が売れないんだよ、と思う。
本当は星4つ以上付けたいけどそんな理由で3つまで。
[ad#co-1]世紀末博狼伝サガ(作画:宮下あきら)
世紀末博狼伝サガ 巻1 香港の裏雀士 (ジャンプコミックスデラックス)
おすすめ度
90年代後半にジャンプ系のヤング誌に連載していた宮下あきらの作品。
単行本で読んでいたが、後に来賀友志が原作協力していたと知って驚いた。
伝説のギャンブラーを自称するサガが様々な種目のギャンブルに挑戦するストーリー。
麻雀にパチンコ。手本引きにゴルフまで。
ただ、本格的な麻雀漫画のような内容ではなく、全自動卓に役満を積み込んだり、体から流れる電流でパチンコ台を大当たりさせたりの無茶理論。
言ってしまえばギャンブル版の男塾みたいなもの。
来賀テイストはどこにも見当たらない。
ただ、来賀友志作品として並べると浮いてしまうが、宮下あきら作品としては良作だと思う。
指して刺す(作画:神田たけ志)
おすすめ度
90年代なかばに発売されている単行本。
真剣師がプロ棋士を次々に破っていくストーリー。
全1巻なのでまとまるはずもなく打ち切り臭い終わり方。
麻雀好きで知られるプロ棋士の先崎学が監修しているため、登場する棋譜がやたらと本格的だった。
将棋に詳しい人なら楽しめるのかもしれない。
投了すっか!(作画:神田たけ志)
おすすめ度
こちらも同時期の将棋モノ。
先崎学監修で棋譜は本格的だ。
ただ舞台はプロになる前の奨励会なので、若者の青春群像記と思うといくらか読みやすい。
関係ないけど「月下の棋士」も奨励会時代が一番面白く感じた。
俺の選択(作画:カツミ)
おすすめ度
99年頃に連載していた作品。
優秀な若手棋士の剣持優はふらりと立ち寄った雀荘で仙石という男と出会う。
その勝負師としての力量に惚れ込んだ優は仙石に教えを請う。
レクチャー漫画っぽく始まるが、麻雀の戦術よりは勝負師としての心構えのようなものが多い。
麻雀漫画としてはオーソドックスな話の運びだが、内容は決して悪くなかった。
点数が低いのは1巻しか発売されていないから。まったく近麻は……。
天牌(作画:嶺岸信明)
おすすめ度
99年から「漫画ゴラク」で連載が続いている麻雀漫画では異例の長編作品。
麻雀で行きていくことを決意する沖本瞬。彼を取り巻く様々な雀士たちの熱い戦いを描いていくストーリー。
一般誌に掲載されているとは思えないほど濃厚な闘牌シーンが多い。
長く続いている弊害で雀力のインフレ化を感じなくもないが、やっぱり面白い。
天牌外伝(作画:嶺岸信明)
おすすめ度
01年から別冊漫画ゴラクで連載されている作品。
麻雀職人「黒沢義明」を主人公にした天牌以前のストーリー。
基本的には一話完結。黒沢が麻雀を通して出会った人達の人間ドラマが描かれている。
短編小説のような作りで読みやすくて天牌とは違った面白さがある。
黒沢が認めるような強い打ち手が街中にゴロゴロいるのはちょっと納得できないが……。
外伝で生まれて本編に登場するキャラクターもいるので、本編と同様に目が離せない。
天牌列伝(作画:嶺岸信明)
おすすめ度
07年頃に漫画ゴラクネクスターで連載していた作品。
入星、北岡、三國、菊多など天牌のサブキャラクターたちのスピンオフが収録されている。
ややファンブック的な要素もあるが本編のストーリーを補強してくれる過去の話だ。
ただ、列伝も外伝も後から過去のストーリーを埋めているので、たまに辻褄の合わない部分も出てくる。
麻雀群狼記 ゴロ(作画:嶺岸信明)
おすすめ度
09年から11年にかけて近代麻雀で連載されていた作品。
哮るの会という雀ゴロ集団の一人安斉雅が、麻雀の世界で凌いでいく様子や生き様を描いたストーリー。
明らかにプロ雀士の安藤満をモデルにしているが、話の展開は史実とは違う方向に進んでいく。
後半、安斉以外のライバルキャラ達が一気に弱体化してやや尻すぼみ気味の終わり方。
ただ、そこまでの内容は面白い。
3巻の初版本を買ったら手牌が8枚白になっている誤植があった。
まとめ
読んだことのある来賀友志先生の原作漫画をまとめてみました。
オススメされても売ってないよ、という声も聞こえてきそうですが、上手いこと古本で見つけるか電子書籍化されるのを願いましょう。
竹書房はとっとと昔の麻雀漫画を電子書籍にしてほしいものです。