二十年もの間、一度も負けること無く引退したと言われている桜井章一。
麻雀プロではない存在でありながら、麻雀界に一時代を築いた伝説の雀鬼についてまとめてみました。
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基本プロフィール
桜井章一氏は1943年の東京都下北沢生まれ。
すでに70歳を超えているんですね。
キャッチフレーズは「伝説の雀鬼」「二十年間無敗の男」「牌の魔術師」など無数にあります。
一番有名なのは「雀鬼」ですかね。身近な人には「会長」と呼ばれている場面が多く見受けられます。
肩書は雀士であり雀荘経営者であり作家でもあります。
本人曰く「オレはただの雀荘のオヤジ」だそうです。
その知名度から講演などの依頼も多いですが、近年では体調を崩して表に出る仕事は極力減らしているようです。
裏プロから表の世界へ
大学時代に代打ち(依頼者の代わりに麻雀を打つ人)としてデビュー。そのまま負けること無く引退しました。
1984年に金子正輝や飯田正人らとの対局が活字版の近代麻雀に掲載。
1986年には桜井本人をモデルにした小説「伝説の雀鬼」(柳史一郎 著)が出版され、その後二十年間無敗の裏プロとして麻雀雑誌に登場します。
漫画やVシネマなど様々な関連作品が立て続けに作られ、あっという間に麻雀メディアを席巻。
さらに雀鬼会という既存の麻雀プロ団体とは違う組織を作り、麻雀の打ち方や男としての生き方まで含んだ雀鬼流という流派を指導していきます。
もともと桜井氏には麻雀プロの打ち方に批判的な言動が目立ちましたが、雀鬼会の選手たちが麻雀最強戦という大きな大会で次々と優勝した頃にプロ団体との関係が悪化。
特に第四期と五期の最強戦でプロではない桜井直径の弟子たちが優勝したときには、近代麻雀誌上でプロ否定宣言が編集長の名前で発表されて、その断絶が確定的になりました。
プロ側の批判を受けて雀鬼会はそれ以降表の麻雀大会などに一切出なくなり、長きに渡り独自の路線を歩み続けます。
近年では関係改善の兆しが見えますが、桜井氏の体調や雀鬼会の縮小などの現状から、本人はもちろん雀鬼流の弟子が大会などで活躍するのを見ることが出来る可能性は低そうです。
二十年間無敗とは?
桜井章一のキャッチフレーズである「二十年間無敗」。
これについて考察してみます。
そもそも麻雀における無敗の定義とはどのようなものでしょう。
- 全ての半荘がトップだった。
- その日一番の勝ち頭。
- その日点棒が浮いていた。
- 長年の勝負トータルで浮いていた。
普通の人なら4でも十分強い打ち手といえますが、さすがにこれで二十年間無敗を名乗るのは無理があります。
代打ちのようなアンダーグラウンドの世界の勝ち負けはハッキリわかりませんが、小説や漫画で描かれている内容を参考にすると、2の「その日の勝ち頭になる」という状況を二十年間続けたというのが当てはまりそうです。
では具体的に二十年の間にどのくらいの数の勝負があったのでしょう。
「伝説の雀鬼」(柳史一郎 著)の中に次のような一文があります。
銀座の夜の帝王たちのような、あるいはもっと手強いプロたちとの凄まじい闘いは、年に二、三度はあった。
銀座の夜の帝王というのは作中に登場するかなりの強敵です。
こういうAクラス相手の勝負が年に2、3回。
義理絡みで断れない代打ちだけを引き受けて、発熱するほど神経を集中させて勝負に臨んでいたというエピソードから考えると、格下相手との戦いを入れても年に5、6回の数だと思われます。
多くても10回は無いでしょう。
さらにデビュー直後の学生時代や引退間際など勝負が少なそうな時期も考慮すると、二十年間で100回ほどの代打ちを引き受けたのではないでしょうか。
イメージしていたより少ない気もしますが、その日の一番になる(25%)のを100回続けるというのは麻雀では聞いたことがない勝率です。
単純計算だと0.0000…と小数点以下にゼロが60桁近く並ぶ%になります。
と言っても作中では互いに激しくイカサマ技が飛び交っています。
通常の麻雀の常識に当てはめようとするのは間違いでしょうね。
[ad#co-1]雀鬼流とは
雀鬼流とは雀鬼会で指導されている桜井章一氏の教えです。
麻雀の打ち方だけではなく日頃の生活態度なども含まれます。
一般的に知られているのは麻雀の中の厳しい決め事でしょうか。
有名なものをいくつかピックアップしてみます。
第一打の字牌切り禁止
一番有名なルールです。
比較的簡単にできるので、当時雀鬼流にあこがれていた人たちが真似して字牌から切り出さないように打っていました。
これ最初は役牌とオタ風を切るのを禁止していたんですよね。当時の近代麻雀では雀鬼流の特集や漫画も多かったので覚えています。
他人に役が付かない自分だけの風牌は切っても良かったし、その他の字牌も「失礼」と言えば第一打でも切れました。
すぐに役牌をポンされて勝負が早まるのを避けるためと、他人の風牌をいきなり切るのは失礼だという考え方からです。
お客さんの風からは切らない、という年配の雀荘メンバーなどに見られる古風なマナーに似ています。
ところが安易に字牌を切るために「失礼」を連発する者がいたために例外なしの全面禁止に。
さらに風牌は全部大事だという理由が乗せられて、オタ風も切れなくなりました。
モロ引っ掛けリーチの禁止
これも昔の雀荘メンバーのルールっぽいですね。
135から5を切ってリーチは出来ませんし、捨て牌に7があると1を切っても中引っ掛けになるので即リーチは禁止です。
とりあえず5を切って次の巡目でツモ切りリーチ。次のツモが5だったらもう一巡まわしてリーチしなければなりません。
待ちがもろバレじゃないかと思うでしょうが、ツモるからバレてもいいというのが雀鬼流の考え方です。
出和了りを期待しないという考え方で、字牌の地獄待ちも禁止されています。
打牌は2秒以内に
「一打を切るのに2秒以上かけているのは考えているんじゃない、迷っているんだ」
理よりも感覚を大事にする雀鬼流ならではの教えで打牌時間に制限が付きました。
麻雀のキャリアがそれなりにある方ならわかると思いますが、打牌に2秒というのはそこまで無茶な制限でもありません。完璧には難しいですが手慣れた面子が揃えばそのくらいのスピードで回ることもあります。
ですが、雀鬼会ではさらにスピードアップ。
後期には1秒以内に切る速さで半荘を15分で終わらせていました。
普通の麻雀ではまず見られない速度です。
ゲームにかかった時間を計測したりして完全に速さが目的になっていましたね。
ちなみに桜井氏が打っている映像を見ると、そこまで高速で切ってはいません。(2秒以上考えていることもあり)
後付、片和了りの禁止
鳴いた上がりで最後に役牌が出てロン、もしくは三色の片和了りなどは禁止されています。
ただし、一番目に役牌を鳴かなくても途中でポンしての和了りは認められます。(桜井氏はこれを中付けと呼んでいた)
テンパイまでドラ切り禁止
「ドラは恋人だと思いなさい」と言われるほど重視されている決め事です。
特殊な牌姿で切っても良い場面もありますが、ドラを切った以上はリーチと同じような扱い。
例えば手の内にドラを2枚抱えた国士無双のイーシャンテンなら1枚切ることが出来ますが、続けて2枚切ることは出来ません。(テンパイ時に2枚目を切る)
テンパイするまでは例え相手からリーチがかかってもオールツモ切りしなくてはいけません。
他にも点棒状況による様々な和了りの制限や役満が見える場面での制約、見せ牌などへの罰則など細かいルールがたくさん存在します。
現代麻雀のセオリーやルールとは大きくかけ離れていますね。
[ad#co-1]イカサマの技術は?
桜井章一と言えばやはり麻雀のイカサマ技。
漫画や小説などでは神業のように描かれていました。
書籍だけでは本物の技の冴えを知ることは出来ませんが、昔の映像でイカサマの実践を見ることができます。
う~ん、思ったよりは微妙?
確かになめらかに技を繰り出していますが、今だとすぐにバレそうな気がします。
もっとも、当時の雀荘では現代麻雀のように捨て牌もキレイに整頓されておらず、店内もタバコでモクモクとしてガヤついていたでしょうから、イカサマ技がかけやすかった土壌があるのでしょう。
こちらはVシネマ「雀鬼外伝」に収録されていた特典映像です。
桜井氏が必要牌を集めて、上家にツバメ返しで大三元字一色を和了らせています。
前局に下家の中野浩一さんに国士無双を仕込んでいることから、残りの字牌をほぼすべてかき集める必要があります。
難易度はかなり高そうです。
やっぱりスゴイんでしょうか?
桜井章一の実戦の強さは?
イカサマ技がスゴイのはわかりましたが、やはり気になるのは麻雀そのものの実力です。
しかし桜井氏の実力を知ろうとしても、実際に打っている映像や牌譜などの資料が少ないので難しいです。
有名なのは1984年に行われた金子正輝や飯田正人が相手の誌上対局ですが、これは映像はもちろん牌譜もごく一部しか残されていません。
第三者の意見で「あの人はスゴイ」みたいな話はいくつも見つかりますが、やはり実戦の様子を見てみないとなんとも言えませんよね。
桜井氏が打っているところがハッキリ映っている映像は、2008年の雀鬼会での対局のものがありました。
ルールが雀鬼流であることや、視点が桜井氏の手牌に固定されているなど不満はありますが、これ以上にしっかり打っている資料は無さそうです。
6位狙いうんぬんは抜きにして普通に強い打ち手という印象を受けますね。
はじめに字牌から切り出さないことやドラを引っ張るなどの雀鬼流のルール以外の部分では意外にオーソドックス。
やや決め打ち気味の打ち筋ですね。
むしろ牌を扱う手つきの方に感心してしまいました。
指に磁石でも付いているように牌が吸い付いています。
しゃんと背筋が伸びて打つ姿もキレイです。
まとめ
麻雀メディアの一時代を築いた桜井章一。
その実力はいまだにハッキリしませんが、実際には神様のような力量の持ち主というよりは普通に強かった雀士というところではないでしょうか。
時代や運、世間が求めるヒーロー像にピッタリとマッチして、あっという間に高いところまで祭り上げられたのが真実という気がします。
活躍を見続けてきた麻雀ファンとしては、本当に漫画の主人公のような人物であって欲しいという気持ちもまだ残ってはいますけれどもね。